良い音源が欲しい!

DTMをやっている人なら少なからず一度は思うことがあると思うのです。各社新しいものを開発して、そのデモソングはとても魅力的に思えるものがたくさんありますから、これを買えばもっと良くなるのでは、と思ってしまうのは自然な流れですよね。でもホントに新しい音源は必要なのでしょうか?

最近は本当に音源が良くなった 

今となっては見かけることも少なくなってしまいましたが、90年代から出始めたGM規格の音源の頃と比較すると最近の音源は音質や使い勝手の面から考えても本当に良くなりました。特に生楽器系のサンプルは録音の質も向上しましたし、同じ楽器でも複数の音色から選べるほどたくさん出るようになりました。各楽器の奏法なども充実してキースイッチにより表現の面でも向上しました。シンセ系も音抜けそのものの質が向上したものからエディットやアルペジエータといった創作を含めた操作性など向上したものなど、たくさんあります。日々進化しているので新しいものを選ぶのが難しいほどに目移りしてしまいます。

何のために欲しい?

新しい音源が欲しいと思うにはいろんな理由があると思うのですが、その動機はなんでしょうか。私がよく聞く理由は、自分の曲をもっとよく聞こえさせたいから、でしょうか。また、お仕事をされている方でしたら、クライアントの要望を実現するために明らかに手持ちの音源では不足がある、といった身に迫る理由を聞くこともあります。アマチュアの方だったら、もしかしたらよい音源があれば自分もスゴイ曲が書けるかもしれないと思ったり、プロとの違いは音源にあるのではないか?と考えるかもしれませんね。

動機は様々あるとは思うのですが、一体何のために欲しいのかもう一度考えてみると、意外に見落としがちなとても大切な技術にたどりつくこともあるのです。

楽曲の質はどこで決まるか

さて、楽曲の質は一体どこで決まってくるのでしょうか。作曲、アレンジ、表現、調整といった要素の他にも歌モノだったら歌詞かもしれないですし、劇伴だったらシーンに合っているか、といった要素まで様々かと思います。また、自分の曲の質を決める場合と、他人の曲の質を決める場合でいろいろと思うところに差があることも多いのではないでしょうか。自分で書いた曲の気にいらないところを他人は褒めてくれることもありますし、逆に、自分で気に入っているところをあまり評価してくれなかったり。聞く人によって全く意見が違うので困惑することも多いですよね。

その中で、音源も大切な要素の一つにはなっていると思うのですが、それがどこまで聞く人に伝わるかというところはすごく難しいところです。私のサウンドクリエーターとしての経験の話になってしまうのですが、一生懸命考えて質を向上するぞ、と意気込んで高価な音源に差し替えてクライアントに出したのですが「え?何か変わりました?そういうことではなくて、もっとノリが欲しいんですよね~」と言われたことがあります。クライアントは音源よりも、曲のイメージそのものを変えて欲しかったんですね。つまり、そのクライアントにとってみれば音源の質など聞いてはなかった、ということになります。その時はとても勘違いしていました。

そもそも、打ち込みの音源をいくら高価なものにしても生演奏を収録したものにはかなわないことだってありますし、音源が原因で名曲が損なわれるのか、と言えばそうでもないですよね。逆に生演奏だからすべて良いわけでもなく、むしろ打ち込みの良さを買われることだってあると思います。

たまにTVでやっている「数億のストラディバリウスの音はどっち?」みたいな企画を見ても感じるところなのですが、例え練習用のバイオリンであっても演奏者が上手に弾けば多くの人はどちらが数億の音か聞き分けることができなかったりするものです。(ただし、音質を知っている人からすればまた別の問題なのですが)逆に、楽器を弾いたことのない初心者が、あの数億のストラディバリウスを弾いても、いい音は奏でられないような気がしますよね。

つまり、すばらしいとされる音源を持っているだけでは、宝の持ち腐れになりかねないですし、これを使ったからといって楽曲の質が飛躍的に向上するのかと言えば、そうとも言えない部分も多いのではないでしょうか。ビジネス的な言い方をすれば、「対費用効果がどれぐらいあるのか」をしっかりと考えていく必要がありそうです。音源に限らず一般的な買い物でも同じですよね…。

もう一度よく自分の書いた曲を分析してみよう

もちろん、今の自分に無いライブラリーが必要という場合は選択肢はそれ以外にないのでしょうけれど、まず音源や音色を変える前にいろいろな部分をよく見なおしてみることはとても大切だと思います。実際に各作業の細部を丁寧に見直すことで、高価な音源を買うよりも質が向上できることもよくあります。

例えば、ブラスアンサンブルを良くしようと思って音源の質を疑う前にブラスパートの作曲は適切か、メロディーパートとブラスパートのアレンジは適切か、ブラスパート内でも各楽器の音域、役割、表現などが曖昧になっていたりしないか…などなど丁寧に見直してみます。それだけで充分に丁寧なアレンジになると思いますよ。目指すブラスアンサンブルの音が本当はどういう楽器構成で鳴らされているのか、しっかりとアレンジと向きあうことで今の音源でも充分に表現できることだってあると思います。

また、特に最近では高品質で録音されてずいぶんと「本物」の音に近いため、アンサンブルのようなアレンジの場合きっちりと役割を生かしていないと良いアンサンブルの音が出ない、といったケースもよく見かけます。つまり、音源の品質が低かったころは「何となく」でそれっぽく聞こえていた音がリアルな音源に変えたことによって嘘が通じなくなるという可能性もあるわけです。

 

音源投資は冷静に!

良い楽器を持てばより良いバランスを知ることができることも確かですし、そのバランスの上に乗っかることで最終的な仕上がりが無意識に向上することもあります。そういった点は音源を高品位にすることで比較的間接的な質の向上を得ることができるのだと思います。しかし、音源への投資は決して安いものではないので、自分の求めること、技量などを冷静に判断した方がいいのではないでしょうか。いろいろな人に助言を求めてみてもいいと思いますよ。そうすると案外、音源じゃないところに答えがあるかもしれませんよ?

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